「関節リウマチ」とは
関節リウマチ(以下、リウマチ) は、手指の第2・第3関節や手首の関節が「腫れて」「痛んで」「こわばる」病気です。人口の1%弱に発症しますので、稀な病気ではございません。
40〜50歳代の女性に多い病気ですが、若年者・高齢者、そして男性にも起こります。いわゆる膠原病のひとつであり、本来は、細菌やウイルスなどの外敵から自分を防御する免疫が、間違って、自分自身の関節を攻撃して起こる関節炎です。関節の内貼(うちばり)をしている関節滑膜に炎症が起って腫れ上がる「関節滑膜炎」が病気の主体です。
リウマチと関節破壊
リウマチでは、関節が腫れて痛いだけでなく、特に、腫れた関節では「関節の破壊」が起こります。関節軟骨が破壊されて関節の隙間が縮小し(関節裂隙狭小化)、関節の骨が欠け(骨びらん)、更には周囲の靭帯も損傷して関節が緩み(亜脱臼)、最終的には関節が固まって曲がらなくなります(強直)。このように、関節が著しく壊れてしまうと、リウマチが落ち着いた後も、後遺症として日常生活に支障を生じます。以前は、リウマチの関節破壊は、ゆっくり進むと考えられてきました。しかし、近年では、リウマチが起こってから2年以内に急速に進むことが分かり、早期からの十分な薬物治療が望まれております。すなわち、発症2年以内に有効な治療を開始することが大切であり、これを「治療機会の窓(window of opportunity)」と言います。特に、発症時に重症の関節炎を患っていたり、抗CCP抗体値が非常に高いなど、関節が壊れやすいと推測されるリウマチ患者さんには、早期から十分に効き目のある治療が必要で、その場合には、生物学的製剤やJAK阻害薬が有用かもしれません(下記、参照)。
リウマチの治療薬の進歩
1999年に、本邦でもメトトレキサート(MTX、リウマトレックス®)によるリウマチ治療が認可されました。更に、2010年には、メトトレキサートの内服量の上限が、8mg/週から16mg/週に増量され、欧米並みの治療が可能となりました。メトトレキサートは、「anchor drug (中核的な薬)」と呼ばれ、有効性の面からも抗リウマチ薬の中心です。更に、2003年には、本邦でも最初の生物学的製剤(リウマチを起こす炎症物質を直接的に抑制する注射薬)が認可されました。現在では、7種類の生物学的製剤(レミケード®、エンブレル®、アクテムラ®、ヒュミラ®、オレンシア®、シンポニー®、シムジア®)が認可されております。生物学的製剤は、メトトレキサートで治療効果が不十分なリウマチ患者さんに使用され、個人差はありますが劇的な治療効果を発揮します。また、急速に関節が破壊されてしまう可能性が高い重症のリウマチ患者さんには、治療の早期から生物学的製剤を開始する場合もございます。更に、生物学的製剤に匹敵する内服薬(JAK阻害薬、ゼルヤンツ®)も登場し、リウマチ患者さんの治療に役立っております。生物学的製剤やJAK阻害薬は、全てのリウマチ患者さんに必要なわけではありません。およそ、関節炎が重症である2〜3割のリウマチ患者さんで必要となります。
診察室における「パラダイムシフト (paradigm shift 枠組みの変化)」
メトトレキサートと生物学的製剤・JAK阻害薬の普及によって、今日では、リウマチを患っても、早期から適切な治療を開始すれば、関節破壊を来すことなく、これまで通りの日常生活を送ることが期待できる時代になりました。正に、治療の枠組みが変わった(パラダイムシフトが起こった)時代と言えます。
臨床的「寛解」を保つために
リウマチ治療薬の劇的な進歩によって、発症早期から十分な治療を行うことで、関節痛がほぼ消失した状態(臨床的寛解)を達成できる時代になりました。臨床的寛解を早期に達成して、それを維持することで、リウマチが発症する前の元の生活にお戻りいただけるかもしれません。リウマチを発症してしまったために、断念せざるを得なかったお仕事、趣味、社会貢献の場にお戻りいただくことは、リウマチ治療の大切な目的です。更に、臨床的寛解を維持できれば、関節破壊を防ぐことができます。昨今のリウマチ薬物療法では、臨床的寛解を達成し、ある一定期間、臨床的寛解を続けることができたリウマチ患者さんにおいては、いかにして治療を減量していくか?ということが注目されております。実際、生物学的製剤やJAK阻害薬を開始するときに、リウマチ患者さんに、「いつまで続ける必要がありますか?」と尋ねられることが多いです。生物学的製剤やJAK阻害薬は高価なお薬ですので、「いつまで続ける必要があるか?」ということはとても重要となります。副作用の回避や治療費の軽減のためにも、臨床的寛解を維持できました後には、積極的に治療薬の減量に取り組んでまいります。
当院におけるリウマチ診療
当院では、リウマチ専門診療において、これまで記載させて頂きました最新の治療を実践致します。一人でも多くのリウマチ患者さんが安心してリウマチ発症前の生活に復帰されますよう、職員一丸となって全力を尽くしてまいります。